※2019年9月2日に作成された記事です。

「老後資金2000万円」―数字の根拠は?

「セカンドライフが30年あると仮定すると夫婦で約2000万円の金融資産の取り崩しが必要になる」と報告した金融庁のレポートが「2000万円問題」として大きな話題を呼びました。投資セミナーへの問い合わせ件数等が増えるなど、危機感を煽られ、行動に出ている人もいるようです。

本当に老後資金として2000万円が必要なのでしょうか。その場合、老後を迎える前に私たちは今、何ができるでしょうか。

まず、「老後資金2000万円」の根拠を見ていきましょう。この数字は、総務省による2017年の家計調査に基づいています。

家計調査から、夫65歳以上、妻60歳以上の働いていない夫婦の実収入と実支出の差が55,000円になると試算。家計が毎月55,000円の赤字になることから、人生100年を考慮して、30年でかかる赤字の累計額である約2000万円が必要だとレポートしたのです。

実際には、貯蓄がある家庭において収入+55,000円程度やそれ以上の支出をしているというケースもありますし、貯蓄がなければ収入の範囲内で生活費をまかなっている可能性もあります。

「55,000円」という数字もあくまで平均的なものなので、自分自身が、老後にどれだけのお金が必要になるのかを知っておく必要があります。

老後も安心。ライフプランニングシートのススメ

そこで、オススメしたいのが「ライフプランニングシート」の作成です!60歳以降、退職を考える年齢以降における向こう数十年の収入と支出の概算を出してシートにまとめます。

プラス(収入)の要素としては、個人年金保険、貯蓄、公的年金、退職金など。マイナス(支出)の要素としては、住宅ローンの残債や生活費。

個人年金保険は加入している機関の窓口に、退職金は会社の総務部に問い合わせをすれば概算などが確認できます。公的年金については、毎年誕生月に届くねんきん定期便を確認しましょう。登録の手間はかかりますが、「ねんきんネット」に登録することもオススメです。いつでもアクセスでき、年金見込み額を確認したり、働き方を変更した場合の受給額の変化を計算することもできますよ。

支出に関しては、ざっくり計算するならば現役時代の約7割程度を見積もるもの一案です。もう少し丁寧に検証するならば、通帳やクレジットカードの明細をみながら、教育費はなくなる、医療費は高くなるかも、などと老後に毎月必要な金額を出してみると良いでしょう。

60歳 61歳 65歳 66歳 94歳
プラス 個人年金保険 600
貯蓄 1000
退職金 1500    
公的年金 240 240 240
給与 200 200
マイナス  
住宅ローン 800
生活費 300 300 300 300 300
合計 2200 2100 1740 1680 0
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自分にとってちょうど良いバランスを見つけるために何パターンも書くのがおすすめ

収入(プラス)と支出(マイナス)の推移を整理して、完全に手持ち資金がゼロになるタイミングがなければ、たとえ貯蓄が2000万円なかったとしても、安心して暮らすことができます。

一度数字に落とし込んで全体を見てみると、「60歳で退職はしないで、できる限り働き続けるためにも体力を維持しよう」「最低限、これだけは貯蓄しよう」「生活費はここを抑えよう」など、現時点から将来を見据えてできることが見えてきます。貯蓄を増やすだけでなく、支出を減らすという観点で、できることもあるはずです。

投資は、資産の価値を維持するための手段

では、「足りない資金を補うための投資」は妥当なのでしょうか。

老後資金で足りない分を投資で補填するという考え方は危険です。投資は足りない資金を補うためのものではなく、資産の価値を維持するためのものです。

そもそも投資に向く人と向かない人がいます。あくまで投資は元金が保証されないものなので、お金が減ることに対して精神的な負荷を感じる人は、心的コストに見合わない可能性もあります。

老後資金が足りなくなるから、むやみに投資に走るのではなく、自分の将来のお金についての概算を出し、投資のコストやリスクも理解した上で、自分にとって今必要なことを考えましょう。

低金利の今は資産を保有していても増やすことは難しいため、景気や物価が変動するなかで、資産の価値を維持するために投資をすることは一つの選択肢です。「足りないお金を補う」のではなくあくまで「お金の価値を維持する」ことを目的に検討すると、冷静に考えやすくなります。

<監修>
風呂内亜矢(ファイナンシャルプランナー)

<ライター>
徳留里香

<提供>
お金のデザイン

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